【完全版】一人社長の株式会社を自分で解散・清算登記する手順

昨年、一人社長で運営していた株式会社を清算しました。解散登記と清算登記をすべて自分でやったので、これからやる方の参考のために記録を残しておきます。

登記事項のオンライン送信と書類の郵送をすれば、一度も法務局を訪れることなく手続きが完了します。実際に使った書類のテンプレートなどもGoogleドライブにあげてあるので、ぜひご活用ください。(編集権限のリクエストではなく、ご自身のGoogleドライブにファイルをコピーしてお使いください)

【免責事項】下記の内容は私が実際に解散・清算登記でおこなったものですが、必ずしも正しい手続きであることを保証するものではありません。最新の情報を確認したうえで、少しでも不安がある場合は行政書士や法務局などにご確認ください。

具体的な手続きの前に、いくつか前提条件を確認しておきましょう。

前提条件
  • 株主は自分ひとり(もしくは数名のみで、すぐに集合して合意がとれる)
  • 取締役は自分ひとり(もしくは数名のみで、すぐに集合して合意がとれる)
  • 借入金や買掛金などの負債がない
  • 税務に関しては税理士さんにお願いできる

株主が複数人いたり、負債が少しでもあったりするといっきにややこしくなりそうです。

株式会社の解散・清算登記に必要な費用と期間

解散・清算登記には下記の登録免許税が必要です。

  • 解散登記:30,000円
  • 清算人の選任登記:9,000円
  • 清算結了の登記:2,000円

よって最低でも41,000円はかかります。印紙を買うときは30,000円、5,000円、4,000円、2,000円のように分けるといいと思います。

もし官報で公示する場合にはさらに4〜5万円ほどかかります。

また、解散登記から清算結了の登記までは最低でも2ヶ月は空けないといけないので、全体の手続きとしては2ヶ月半〜3ヶ月くらいはかかります。

逆に手続きをだらだらとやって決算期をまたいでしまうと、そのぶん決算手数料や法人住民税などがかかってしまいます。

法人を清算すると決めたら、余裕を持ったスケジュールをたてて計画的にすすめましょう。

株式会社を清算するまでの大まかな流れ

会社を清算するには「解散」と「清算」という2つの登記が必要です。ざっくりいうと

  • 解散:会社をたたむということを決定すること
  • 清算:会社をたたむために会社の資産を清算すること

ということです。

さらに、解散と清算それぞれの決算が必要なので、大まかな流れとしては

  1. 解散・清算人選任の登記
  2. 解散の決算
  3. 財産分与・清算の決算
  4. 清算結了の登記

となります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

株式会社の解散・清算人選任登記の手順

  1. 株主総会の特別決議で解散を決議し、清算人を選任する
  2. 申請内容と登記すべき事項をオンライン送信する
  3. 登記申請書と添付書類を法務局に郵送する

簡単3ステップですね。

なお、解散と同時に清算人の選任もおこないます。清算人とは清算手続きをおこなう人のことです。一人社長の会社なら代表取締役の自分がそのまま代表清算人になるのが一番簡単でわかりやすいです。

詳しく説明していきます。

1. 株主総会の特別決議で解散を決議し、清算人を選任する

難しい言葉だらけですが、要は株主がみんなで集まって解散に合意すればOKです。株主が自分一人なら自分で決めるだけですね。決議した日が会社の解散日となります。

ここで大切なのは株主総会の議事録です。議事録は登記申請書と一緒に法務局に送りますのできちんと作っておきます。テンプレートのリンクは後ほどまとめて記載します。

2. 申請内容と登記すべき事項をオンライン送信する

次に、申請書の内容と登記すべき事項をオンラインで送信しておきます。オンラインで送信することで

  • 登記申請書をミスを無く簡単に作成できる
  • 登記手続きの進捗が確認できる

という大きなメリットがあります。普通に登記申請書を提出すると登記がちゃんと完了したのか分からないので不安になりますが、オンラインで送信しておくと手続きの進捗を確認できるので安心です。

なお、ここでは登記の内容を事前に送信するだけで、実際の登記申請のためには書類を郵送する必要があります。

電子署名を使えば登記申請自体をオンラインでできるようになりますが、そのための準備がかなり面倒です。1回きりのためにそこまでするとかえって手間が増えてしまうので、この方法が一番簡単かと思います。

具体的な手順は法務局のこちらのページをご参照ください。

QRコード(二次元バーコード)付き書面申請について

ちなみにここで使用する申請用総合ソフトはWindowsでしか動かないクソ仕様なので、Macをお使いの方はなんとかしましょう。さらに、オンラインのくせに利用時間が平日のみに限定されているクソオブクソ仕様なので、なんとか耐え難きを耐えましょう。

申請書の様式は「商業登記申請書」から「QRコード(二次元バーコード)付き書面申請書(会社用): 株式会社…【署名不要】」を選びます。

QRコード

申請書の中で登記すべき事項を入力できるので、下の方にある「登記すべき事項の事前提出書」を使う必要はありません。

こちらの記載例を参考に記入していきます。

株式会社解散及び清算人選任登記申請書 記載例

下記はコピペ用です。

登記の事由
解散
令和●年●月●日清算人及び代表清算人の選任
添付書類
定款 1通
株主総会議事録 1通
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通
就任承諾書 1通
登記すべき事項

登記すべき事項は「別紙表示」ボタンを押すと入力できます。「作成例の種別 > 株式会社関係」「作成例 > 0016株式・解散・清算人の選任」を選ぶと作成例が自動で入力されるので、そちらを利用しましょう。

清算人が自分一人の場合は「清算人」を1つだけ残して、他の清算人の項目は消してOKです。「役員に関する事項」「資格」「氏名」がワンセットになっていますので、忘れず消してください。

その他の項目
  • 申請書タイトル:株式会社解散及び清算人選任登記申請書
  • 登録免許税額:39,000円(課税:軽減措置なし)
  • 印鑑届出の有無:有(※管轄登記所に別途提出)

その他、会社情報や申請人情報、申請先の登記所を入力すれば入力完了です。入力が終わったらもう一度よく確認してから送信しましょう。

送信して数分するとステータスが「到達」になるので、以上でオンライン送信は完了です。これでQRコードが記載された登記申請書がダウンロードできるようになります。

3. 登記申請書と添付書類を法務局に郵送する

最後に必要なすべての書類を法務局に郵送すれば完了です。

必要な書類は下記のとおりです。テンプレートのリンクも貼っておきます。

まとめてダウンロードしたい方はこちらから

QRコード付き登記申請書

印鑑届書で登録する法人印で捺印し、印紙39,000円を右下に貼ります。

また、書類の不備があったときに連絡をもらえるよう、念のため電話番号を記載しておきます。

印鑑届書

法人印の登録をします。注1の届出印には法人印で、注3の印には印鑑登録してある個人の印鑑で捺印します。

「印鑑提出者 > 資格」はカッコ内に「代表清算人」と記入します。また、「市区町村長作成の印鑑証明書は,登記申請書に添付のものを援用する。」はチェック不要です。

定款

私の場合は、会社設立時に電子定款を利用したので製本された定款はありませんでした。その場合はPDFを編集して定款の最後に下記のように記載しておけばOKです。

令和●年●月●日
 以上は当会社の定款に相違ない。

                               東京都●●区●●●1-2-3
                               株式会社●●●●
                               代表清算人 山田太郎 

また、公証人の認証日や会社の成立日は空欄でも大丈夫です。捺印や割印も不要です。PDFを印刷して提出します。

個人の印鑑証明書(原本)

市区町村に登録した個人の印鑑証明書を取得します。会社設立時の印鑑と違っても大丈夫です。

ちなみに個人の印鑑での捺印は印鑑届書のみです。


宛名は「●●法務局 法人係 御中」とし、封筒に「商業登記申請書在中」と記載しておくとよりスムーズです。

書類が法務局に到着すると受付番号が発行されます。オンライン送信しておけばこの通知をメールで送ってくれます。

その後、手続きが完了したらまた通知が送られてきます。私の場合は、受付番号が発行されてからちょうど1週間で手続完了となりました。

これで解散の登記は終了です。お疲れ様でした。

解散から清算までの期間

解散から清算までは2ヶ月以上空けなければいけません。これは債権者保護を目的とした期間なので負債がない会社にとってはあまり関係ありませんが、手続き上2ヶ月は空ける必要があります。

本来は官報公告で告示しなければいけませんが、負債がなければ告示する相手もいないので官報公告は必要ないと言われています。実際に私も官報公告はしませんでしたが、何か指摘されたり手続きが滞るようなことはありませんでした。

私の場合はこの間に残余財産を確定させたり、決算手続きを税理士さんにお願いしたり、社会保険事務所への届け出などをおこないました。

解散と清算の決算

実際の決算手続きはほとんど税理士さんにお願いすることになるので、こちらでやることはあまりありません。

ちなみに、期初〜解散までと解散〜清算までの2回の会計年度の確定申告が必要となりますので、2回分の決算手数料や法人住民税がかかる場合があります。

会社の解散・清算にかかる節税について

本筋から少しずれますが、残余財産に関する節税についても説明しておきます。

まず、資本金の金額分は非課税で払い戻しできるのでその分を払い戻します。

それでも資産が残る場合は、配当として支給(みなし配当と言います)するか、解散時の取締役退任時に退職金として支給するという方法があります。

配当として支給すると所得税20.42%が源泉徴収されますが、確定申告のときに配当控除が適用されて総合課税となります。

退職金の場合は退職所得控除が適用され、分離課税となります。

配当と退職金をどのようなバランスで支給するのがよいのかは人によって異なるので言及できませんが、解散すると決めたら残余財産がどれくらいになりそうか、退職金の上限額はいくらか、退職所得控除はいくらか、配当控除はいくらかなど、あらかじめ税理士さんに相談しておくとよいかと思います。

なお、退職金を支給する場合は下記の点に注意点しましょう。

  • 役職に応じた退職金の上限額を超えないようにする
  • 解散決議の臨時株主総会で退職金についても合意を取り、その内容を議事録に記載する
  • 退職金に関する社内規定を作っておく

株式会社の清算結了の登記の手順

清算の確定申告が完了したら、いよいよ清算結了の登記です。この登記が終わればすべての手続きが終了となります。

解散登記の手順とほとんど同じで、簡単3ステップです。

  1. 株主総会で決算内容を承認する
  2. 申請内容と登記すべき事項をオンライン送信する
  3. 登記申請書と添付書類を法務局に郵送する

1. 株主総会で決算内容を承認する

まずは株主総会を開いて清算決算の承認をおこないます。ここでも重要なのは議事録です。

テンプレートのリンクは後でまとめて記載します。

2. 申請内容と登記すべき事項をオンライン送信する

解散登記のときと同じように申請内容と登記すべき事項をオンラインで送信します。様式も同じ「QRコード(二次元バーコード)付き書面申請書(会社用): 株式会社…【署名不要】」を利用します。

こちらの記載例を参考に記入していきます。

株式会社清算結了登記申請書 記載例

以下コピペ用。

  • 申請書タイトル:株式会社清算結了登記申請書
  • 登記の事由:清算結了
  • 登記すべき事項:「登記記録に関する事項」令和●年●月●日清算結了
  • 登録免許税額:2,000円
  • 印鑑届出の有無:無
【添付書類】
株主総会議事録(決算報告書を含む。)1通
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)1通

送信が完了するとQRコードが記載された登記申請書がダウンロードできるようになります。

3. 登記申請書と添付書類を法務局に郵送する

最後に必要書類をまとめて法務局に郵送します。清算結了登記で必要な書類は下記のとおりです。例によってテンプレートもリンクしておきます。

まとめてダウンロードしたい方はこちらから

QRコード付き登記申請書

解散登記申請書と同じように法人印で捺印し、印紙2,000円を右下に貼ります。また、電話番号も記載しておきます。

清算決算報告書

清算決算報告書は税理士さんに作成してもらいます。


清算結了登記も書類が法務局に到着してから1週間ほどで手続きが完了します。

最後に税務署に届出を提出する必要がありますが、これは税理士さんならオンラインでできるので、お願いすれば無料でやってくれるかと思います。

まとめ

以上で一人社長の株式会社の解散・清算手続きは完了です。お疲れ様でした。

行政書士にお願いすると10万円ほどかかるので、あなたはこの記事を読むことで10万円節約したことになります。焼肉おごってください🍖

コメント

  1. ヒラ より:

    ほぼ1人社長の株式会社解散のため、
    士業の力を極力借りない手続き方法を探しており、本記事に出会いました。

    こちらの記事を参考に登記申請書等を先ほど法務局に郵送することができました。
    解散と清算の決算および清算結了の登記などこれから行うことはまだありますが、本当に助かりました。
    ありがとうございました!

    (どうしてもお礼を言いたく、コメントさせていただきました・・・!)

    • しなーる より:

      ヒラさん、コメントありがとうございます!お役にたてて嬉しいです☺️

      解散登記お疲れ様でした!解散登記が終われば清算登記は楽勝だと思います笑

      もし記事の内容や登記手続き等で分かりづらいところがあったら、いつでもご質問ください!

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